スーツを自宅で洗濯!失敗しないウール製品の洗い方

スーツイメージ

普通の”ドライマーク”がついたウール100%のスーツの洗い方

皆さん、ウールのスーツやパンツを家で洗ってみたい!と思ったことはないでしょうか?ひとつは、経済的理由から。こまめにクリーニングに出していると、意外と出費が大きい!なんてこともあるかもしれません。

もうひとつは、クリーニングではイマイチ汚れが落ちた気がしないから。これは、安売りのクリーニング店ではドライ溶剤(洗浄液)の管理がずさんなために起こるのですが、1〜2度クリーニングしたくらいでは大きな差が出ません。ただ、何度も出していると、だんだん生地がくすんできたり、白けてきたりします。

もちろん、安心して任せられるクリーニング店があれば、それがベストなのですが、どうしても自分で(家で)洗ってみたい!という方に、洗い方のレシピをコッソリお教えします。今回は”ウォッシャブル(洗える)スーツ”でなく、普通の”ドライマーク”がついたウール100%のスーツの洗い方をご紹介します。

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目次
1. なぜスーツは家で洗濯できないの?
2. スーツの洗濯方法
2-1. 用意するもの
2-2. 洗濯する前に
2-3. 洗った後にすること
3. 正しい洗濯と間違った洗濯での比較
4. まとめ

1. なぜスーツは家で洗濯できないの?

スーツやウール100%のズボンは、洗濯するいろいろトラブルを起こします。よくあるトラブルは下記の通り。

生地が縮む

ウール100%の生地は洗うと縮みます。縮む原因は、水、温度、洗剤。この3つが揃うとウール繊維の表面にあるウロコ(キューティクルのようなもの)が開き、それが絡まって縮みます。

縮んで裏地が見えそうな状態

表地が縮んでも裏地はあまり縮まないため、裏地が見えそうになることがあります。

型崩れ(シルエットが崩れる)

スーツのジャケットには芯地と呼ばれる芯材が入っています。これはラべルや肩、袖の形を維持しているものですが、毛芯(けじん)と呼ばれるウール素材で出来た芯地は縮みやすいため、型崩れを起こしやすくなります。

型崩れ

シワが残る

良い生地を使ったスーツは、Super100’sなどのものすご〜く細い繊維を使っています。これはとてもシワになりやすいのですが、反面、吊っておくだけでシワが伸びやすいという特長があります。その繊維も、一度洗濯してしまうと、シワがつきやすく伸びにくい性質になってしまいます。高級スーツの裏地に使われるキュプラも、元は綿から出来ている植物性繊維。綿や麻と同じように、シワがつきやすく、取れにくい性質です。

色落ち

ウールは化学繊維と違い、染色が比較的しっかりしているので、色落ちはしづらい繊維です。とはいえ、洗濯方法を間違えると色落ちしてしまいます。また、厳密に言えば色落ちではないのですが、繊維のウロコが開いてしまうと、生地の表面で光が乱反射するため、生地が白けたように見えます。濃紺や黒のスーツを洗う場合は要注意です。

風合いが損なわれる

ウールはもともとシワになりにくい素材ですが、一度、ウロコが開いてしまうと、シワがつきやすい素材に変化します。また、若干、生地にカサつきがでます。これにより、生地の柔らかさが損なわれて、最悪の場合、チクチクした素材になってしまうことがあります。

このように、スーツは本来、洗濯に向いていない洋服です。ところが、技術のある一部のクリーニング店では、スーツを水洗いするお店もあります。これは、ドライ溶剤で洗うより、水で洗うほうが汗や臭いがよく落ちるためです。この技術を「ウェットクリーニング」といいますが、今ではプロが使うウェットクリーニング用の洗剤が、ネットショッピングで普通に買うことができます。

ウールシャンプー
ウールシャンプーには、普通の洗剤には入っていない防縮剤や色止め剤が入っているので、ウールが縮みにくい洗剤です。また、洗うと取れる生地のスベリ性や光沢を補う成分も配合しているので、何度洗っても白けたり、シワがつきやすくなったりしません。

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2. スーツの洗濯方法

2-1 用意するもの

  • 洗濯機(縦型)
  • 洗濯ネット 1〜2枚
  • ウールシャンプー
  • 肩幅のあるハンガー 1本
  • クリップが付いたハンガー 1本
洗濯機(縦型) 当たり前ですが洗濯機が必要です。最近流行りのドラム式は生地を叩いてしまうので、オススメできません。ドラム式しかない場合は手洗いします。
洗濯ネット 百均などで売られているA2サイズほどの大きさのものでOKです。ズボンは丸めて使えるタイプもありますが、それでもOKです。
ウールシャンプー おしゃれ着洗い洗剤ではスーツを洗うことができません。中性洗剤はニットやちょっとしたものを手洗いするには適していますが、スーツを洗うと生地が固くなり、シワがつきやすくなります。
肩幅のあるハンガー ジャケットを干すハンガーです。型崩れを予防します。
クリップが付いたハンガー パンツを干すハンガーです。型崩れを予防します。

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2-2. 洗濯する前に

高価なスーツを大切に洗うために、事前のチェックは必ず行いましょう。以下、準備方法です。

【注意】ジャケットとパンツはセットで洗いましょう。
中には色落ちするものがあるため、ジャケットだけ、あるいはパンツだけ洗うと、色味が変わる恐れがあります。必ずセットで洗いましょう。

A) 洗濯絵表示の確認

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ウール、カシミア、モヘアなどの獣毛繊維ならOKです。もちろん、ポリエステル混紡もOKです。ストレッチ素材(ポリウレタンやスパンデックス)も、5%以下なら大丈夫です。裏地はポリエステルかキュプラならOKです。

  • 綿や麻のジャケットも洗えますが、シワがつきやすく、アイロンが大変なのでオススメしません。
  • レーヨンやレーヨン混の素材を使っているものは、洗わないでください。
B) 色落ちの確認

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洗剤の原液をタオルなどに浸けて、目立たないところを叩いてみます。色落ちしなければOKです。

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C) 汚れの確認

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エリやソデは汚れがつきやすいので、洗剤の原液を直接塗ります。

D) ネットに入れる

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スーツやパンツをたたんでネットに入れます。あまり遊び(余裕)がない状態が理想です。

E) 洗濯機の設定

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洗濯コースを選びます。ソフト洗いコース(ソフト、ドライコース、弱水流、手洗いなど)で洗い時間は5〜8分、すすぎは1〜2回、脱水は1分、水位は40Lほど(スーツ2セットの場合)に設定します。

F) 洗剤を溶かす

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洗濯物を入れる前に、先に洗剤を水に溶かしておきます。空の洗濯機にキャップで4〜5杯(40Lの場合)、洗剤を入れてスタートさせます。

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G) 洗濯物を入れる

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洗濯物が浸かる程度に水が溜まったら、洗濯物を入れます。ウールは浮きやすいので、少し沈めるように押し込みます。

2-3. 洗った後にすること

洗った後は出来るだけ早くハンガーに吊って乾燥させます。

ジャケット

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肩幅のあるハンガーに吊って干します。絞りジワが付いている場合は、叩いたり引っ張ったりして形を整えます。濡れているうちに形を整えておけば、シルエットが崩れるのを防ぐことができます。

パンツ

ズボンクリップ

パンツのクリース(折り線)に合わせて、クリップに挟みます。パンツの重さで引っ張られるので、シワが伸びてアイロンが楽になります。

乾燥後

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シワが目立つようなら、風呂上がりの風呂場などでしばらく吊り干ししておきます。それでもシワが取れない場合は、軽くアイロン蒸気を当てます。ウールシャンプーならアイロンで抑えなくてもシワが伸びます。どうしてもアイロンを当てたい場合は、動画マニュアルを参考にしてください。

3. 正しい洗濯と間違った洗濯での比較

以上の方法で洗濯したものと、某おしゃれ着洗剤で普通にドライコース洗濯したものとの比較です。

ウールシャンプー比較色ウールシャンプー比較シワ

おしゃれ着洗剤では縮みや色落ちが見られ、取りづらい細かいシワ(チリメンジワ)が出ます。ウールシャンプーなら10回以上洗っても縮みはほとんどなく、シワも簡単に伸び、光沢もそのままです。結果、おしゃれ着洗剤でも洗濯できないことはないですが、毛羽立ちや色落ち、風合いの変化が気になります。数回洗うと差が大きくなることは歴然です。

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4. まとめ

スーツの洗濯方法、ご参考いただけましたでしょうか。スーツを傷めずに汚れを落とすには、やはりキレイな溶剤でドライクリーニングするのが一番ですが、出しに行く時間がない、近くに良いクリーニング店がない、こまめに洗いたいなどの理由で洗濯される場合、洗剤と洗い方を工夫していただければプロと遜色ない洗いがご自宅でも可能です。

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