怪しい洗濯洗剤にご注意!

春の衣替えの季節ですね。
この時期、一気に冬物をお洗濯して片付けよう!という方は多いと思います。
中には自宅でダウンやスーツが洗える!という洗剤もあります。これは、便利に使えば家計も助かりますし、良い製品だと思います。でも、ちょっと気をつけてください!

大手やほとんどのメーカーの製品は大丈夫ですが、一部のメーカーには自社製品を有利に見せようとする悪どい商品表記をしている製品もあります。

例えば、こんなNG表記があります。

  1. ドライクリーニング以上に汚れが落ちる植物系溶剤配合
  2. タンパク質分解酵素配合

以上の2点がよく見られる表記です。ひとつひとつみていきましょう。

1. ドライクリーニング以上に汚れが落ちる植物系溶剤配合
「ドライクリーニング」とは、石油などの溶剤で洗浄するクリーニング方法です。なので、ご家庭での水洗い洗濯とは「得意な汚れ」と「不得意な汚れ」が違うので、どちらがより汚れが落ちるか?は比較できません。

ドライクリーニングは油汚れが得意なので、皮脂汚れや化粧品などはよく落ちます。逆に家庭洗濯などの水洗いは水汚れが得意なので、汗やコーヒー、ジュースはよく落ちます。そして、それぞれの”苦手”を補うのが洗剤の役割です。

「植物系溶剤配合」という商品の成分名をよくみると、成分名にも「植物系溶剤」と書かれています。ですが、家庭用品品質表示法では、1%以上含有する成分は化学名を書くことがルールとなっています。

消費者庁サイトより

ですが、本製品は化学名(恐らくd-リモネン)が書かれていません。ですので、溶剤の濃度は1%未満となります。

さらに、製品の使用量は30Lの水に対し10g。つまり、0.03%の使用濃度です。ここまで書いてピン!と来た人は、学生時代、化学が得意だった人だと思います。つまり、この「植物系溶剤」というのは、洗濯水中の濃度では最大でも0.0003%しかありません。溶剤がこの程度の濃度で入っていても、油汚れは落ちません

では、なぜ「植物系溶剤」を入れるのでしょうか?

一番は「イメージ戦略」です。
「植物系溶剤」というと、なにかすごく安全な成分のように思いませんか?

しかしながら、d-リモネンという成分は油脂溶解力がえげつないほど強く非常に危険な成分です。

d-リモネンを主成分とする製品の安全データシート

もし本当に「ドライクリーニングを超える」くらいの濃度が入っていたとしたら、洗濯機も洋服のボタンも溶けて安全ではありません
指が触れたら、指の油がぜんぶ持っていかれます

どんな有効な成分でも、「適量」というのがあるのです。
d-リモネンに関して言えば、もし、安全な濃度に調整しているのだとしたら、洗浄効果としてはほとんど期待できないでしょう

もうひとつ、d-リモネンには強い柑橘系のニオイがありますので、洗剤の香りを良くする効果があります。これは、超微量(0.01%程度)でも、しっかりとニオイが付いてくれるので、洗剤や洗濯物の香りが良くなります。この程度の濃度であれば問題ないでしょうが、油汚れの洗浄力には寄与しないです。

2.タンパク質分解酵素配合
これは多くの一般的な洗濯洗剤に含まれていますが、絹やウールなどタンパク質繊維の洗濯洗剤では絶対に入れてはいけない成分です。なぜなら、この酵素を入れると繊維が溶けるからです。繊維の表面が溶けると見た目の白けや毛玉がなくなることがあり、一見、良さそうなのですが、保温性が悪くなったり、黄ばんだり、繊維が切れやすくなることがあります。なので、大手のおしゃれ着洗い洗剤には「タンパク質分解酵素」が含まれていません

以上の観点から、ウールやカシミアなど季節製品を洗う場合は、酵素が含まれていない商品を選びましょう。また、「ドライクリーニング並みに油汚れが落ちる●●溶剤含有」という製品は眉唾の可能性が高いので、慎重に選びましょう。

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