貝殻焼成カルシウム(ほたてカルシウム)って危険?

皆さん、貝殻焼成カルシウムというのはご存知でしょうか?

ほたての貝殻を砕いて焼成した「水酸化カルシウム」別名「消石灰」とも言います。

貝殻でできてるからオーガニックだし、安全そう…と思いますよね?「天然成分だから安全」というイメージで売られている事が多い商品です。

実際に、先方に迷惑がかかるかもしれないので引用元は避けますが、こんなイメージで売られていたりします。

でも、ここには「ホント」と「ウソ」が書かれています。

【本当】

天然由来成分

食品添加物

【ウソ】

天然成分だから安全

食品添加物だから安全

貝殻焼成カルシウムというのは、化学名では「水酸化カルシウム」のことを言います。水酸化カルシウム水溶液はpH12以上あるので、「強アルカリ」に分類される薬品です。強アルカリは皮膚を溶かしたり、目に入ると大変危険です。

水酸化カルシウムの危険性は、メーカーの「製品安全データシート(SDS)」をみてみるとよくわかります。

引用:富士フィルム和光純薬(株

GHS分類とは、化学物質の危険性を、その危険度合い別に分類したもので、日本では環境省が定めています。

《解説》

眼に対する重篤な損傷 区分1

※目に入った場合、基本的にはすぐに洗い流せばほとんど問題ないが、放置しておくと失明の危険性あり。

単回ばく露 区分1

※単回ばく露とは、飲み込んだり霧状のものを吸い込むこと。区分1は吸い込むと危険性がかなり高いもの。

近年、水酸化カルシウムの危険性が徐々に周知されてきました。昔は、学校でも白線(ラインパウダー)に消石灰を使われていたことがありますが、最近は炭酸カルシウムへ変更されています。

引用:文科省

では、なぜ、失明するほど危険なのでしょうか?

水溶液のpHは12程度。低くてもpH11はあります。これはかなりの強アルカリです。

強アルカリはタンパク質を溶かすので、人間の皮膚、眼などの細胞が溶けて死んでしまいます。

眼の角膜は個人差がありますので、弱い人は少量でも高アルカリが入ると、溶けて修復不可能な損傷を起こすことがあります。

また、飲み込むと食道がただれる恐れがあります。カルシウムのサプリメントとして飲んでいる人もいますが、あまりおすすめできません。ただ、胃まで達すると胃酸で中和されるので、ほとんどの人にとって少量であれば問題はないと思われます。

そんな危険なものがなぜ、食品添加物として認められているのでしょうか?

パンのイースト菌を発行させる「酸化カルシウムCaO」は発酵促進剤、俗にイーストフードと言われています。これが水と反応すると熱を出し、「水酸化カルシウムCa(OH)₂」に変化します。かなり高熱にならないと全成分が水酸化カルシウムになるわけではありませんが、調理中にどうしてもできてしまう副産物として存在するので、水酸化カルシウムを食品添加物として認めざるを得ず、やむなく認められています。

引用:厚労省資料

また、防腐剤として使われることもあります。一般的に防腐剤というと「パラベン」や「安息香酸ナトリウム」が有名ですが、これらはアルカリ環境ではほとんど防腐効果がありません。そこで、アルカリで安定している場合、防腐剤として水酸化カルシウムが使われることがあります。

また、こんにゃくの凝固剤としても利用されています。

引用:関越物産Webサイト

PH調整剤としても利用されています。

引用:厚労省

PH調整剤とは、極端な酸性、またはアルカリ性になると、食品であれば味や色、化成品であれば化学変化を起こすことなどから、強い酸性の場合は和らげるために水酸化カルシウムを、逆に強いアルカリ性の場合はそれを和らげるためにクエン酸を用いたりして中和します。

引用:コープ食品

PH調整剤として水酸化カルシウムを使用する場合、食品表示法では添加物として表記しなければならないことになっていますが、中和されているので食材のなかでそのまま残ってることはほとんどないでしょう。

いずれにしても、実際に食品の中に含まれる水酸化カルシウムは極微量です。厚労省では、成人一人あたりの水酸化カルシウム摂取量は1日あたり2.05mgまでと定めています。

引用:厚労省

2mgというと、1円玉の1/500の重さなので、どれだけ微量か、なんとなく想像がつくと思います。

つまり、「水酸化カルシウムが食品添加物として許されている理由」は、一言でいえば「量が相当少ないから」です。

水酸化カルシウムは水におおよそ0.1%ほど溶けますので、2cc(小さじ半分)の水酸化カルシウム水溶液を飲んだら危険という計算になります。

2mg÷0.1%=2000mg=2g(小さじ半分)

実際は胃酸があるので、飲んでも胃がムカムカする程度で済むしょう。それでも、皮膚や粘膜に触れると溶ける恐れがあります。革を溶かすのにも水酸化カルシウムは使われています。

引用:日本皮革産業連合会

というわけで、食品添加物としてごく利用する程度であれば人体に害はなし。仮に飲んでも胃酸で中和されるのでほとんど害はなし。しかしながら皮膚や粘膜に触れると溶けるので危険。特に眼の角膜はデリケートなので最悪失明の恐れがある。それが水酸化カルシウムの正しい危険性理解だと思います。

一番厄介なのは、化学名である「水酸化カルシウム」で検索すると危険性がバレてしまうので、「貝殻焼成カルシウム」とか「ほたてカルシウム」という表現が使われていることです。これは非常に狡猾だと思います。消臭剤なんかにも時々使われていたりするので、お子様や乳幼児がいるところは充分気をつけてください。

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